【Professional Story】経営者からの「ありがとう」を追い求めて。不動産業界出身者のM&Aという選択。
多種多様なバックグラウンドを持ったビジネスマンが、更なる成長や高い報酬を求めてM&A仲介業界に挑戦してきています。
当記事では第二新卒で株式会社オープンハウスに入社し、2021年6月にfundbookに参画した黒木に、M&A仲介業界を選択した理由と、不動産業界の経験がどのように業務に活きてくるかを聞きました。
<Profile>
黒木 貴良(くろき たから)
茨城県出身。大学卒業後、独立行政法人国際協力機構(JICA)ボランティアとして中米のホンジュラス共和国にて小学校体育教員として活動。体育授業導入の為に研修会の開催や教科書の作成を実施し、現地の教育水準向上に努める。
その後、株式会社オープンハウスに入社。戸建用地仕入業務に従事し、世田谷区、目黒区、渋谷区等の高級住宅地エリアを担当。2021年6月にfundbookへ参画。
大学卒業後はホンジュラスからオープンハウス
大学卒業後は、青年海外協力隊の制度を活用して海外で過ごされたそうですね。
黒木:なんとなく海外に興味があっただけなのですが、あるテレビ番組の影響で、2年ほどホンジュラスの現地の子が通う学校で体育教師を務めました。
スペイン語も全く経験はなく、3ヶ月ほど研修を受けてから渡航したのですが、最初の半年は意思疎通も難しい状態からのスタートでした。
帰国後にオープンハウスへ入社した経緯を教えてください。
黒木:海外でゆったりとした時間を過ごすなかで、日本に帰ったらガツガツ働きたいという思いが強くなっていきました。
あとは、将来的に営業力があったほうが働き方も広がると考えて、ストイックな営業会社で有名だったオープンハウスを選びました。不動産営業は扱う金額も大きく、その分高い営業力を身に付けられるのではないかと考えていました。
入社後はどのような仕事を担当されていましたか。
黒木:家を販売するための土地の仕入れを行っていました。世田谷や目黒といった比較的価格の高いエリアを任され、土地の情報の取得から仕入れ、決済まで担当していました。
オープンハウスには4年勤務したそうですが、転職を志したきっかけは何でしたか。
黒木:きっかけは実家の後継者問題です。実家は茨城県で自動車関連の事業をしており、私は男三兄弟の長男です。
まだまだ父も50代で承継は先の話ですが、たまたま家族が集まったタイミングでその話になりました。
また、同じタイミングで自分が出している成果に対して、報酬が見合っていないと思っていました。
会社基盤が整っている一方、インセンティブの割合は不動産業界では高いわけではないと感じており、転職を考えるきっかけになりました。
後継者不在で悩む方々のお手伝いをして、直接「ありがとう」がもらえる仕事
転職先として、M&A業界を選んだ理由を教えてください。
黒木:転職を考えたときからM&A業界に転職しようと決めていました。
実家の承継問題を考えていた私は、意外と承継で悩んでいる人は多いのではないかとも考えていました。父の立場からすれば息子3人の内1人くらい継いでくれると思っていたそうですが、息子たちの立場からすればそんなに簡単なことでもないと実感しました。
そんななかで、後継者不在に悩む方々のお手伝いをして、感謝してもらえるM&A業界に魅力を感じました。また、M&Aの実務を実家の承継の際にも活かせるとも考えています。
それまで担ってきた土地の仕入れは、安く土地を仕入れて会社の利益を出してなんぼという仕事で、直接的にお客様から感謝される仕事ではありませんでした。
自分が仕入れた現場の前を通った際に、建物が完成し、すでに住まわれているご家族を見かけたことがあり、とても幸せそうな様子を見たときは良い仕入ができてよかったという想いはありましたが、やっぱりお客様から直接「ありがとう」と言っていただけることはありませんでしたね。
不動産業界からM&A業界に入るにあたって、不安はありませんでしたか。
黒木:全く未経験の業界でしたので「自分が成果を出せるのか」「幅広い業種の経営者の方々とうまく商談ができるのか」といった不安はありましたね。
入社後にギャップなどは感じませんでしたか。
黒木:朝の静かな雰囲気にギャップを感じました。
それが普通の会社なのでしょうが、オープンハウスでは朝イチから朝礼で声が枯れるくらい声出しをしていたので(笑)。
あとは良い意味で上も下もなく、仲が良いですね。先輩や上司に分からないことを尋ねるといつも丁寧に教えてもらえて、風通しの良い組織だと感じました。
前職の不動産業界と比べて、M&A仲介ならではのやりがいはありますか。
黒木:不動産業界では、比較的土地を売却することに対しての抵抗は少ないと感じています。相続で取得した現在は誰も住んでいないご実家、住み替えのために売却した資金を購入代金に充当するなど、売却動機もあり、資金化することが目的であることが多いからです。その為、納得のいく価格であればご売却いただけました。
しかし、M&Aでは我が子のように育ててきた会社を第三者に譲渡するということは、そう簡単なことではないということは想像に難くないと思います。
その為、オーナー様の立場に立ってその企業の事を考えることも必要ですし、客観的な立場から冷静にアドバイスをする必要もあります。
先日ご成約させていただいた案件で、他社と競合していましたが、会食中に社長様からポロッと「担当者が気に入ったから御社に決めたんだ。細かいところまでよく理解してやってくれているよ」という一言を頂けて、仕事の丁寧さを評価していただいたようで、すごく嬉しかったです。
前職までに経験のなかった部分で、M&A仲介に入ってから苦労した、慣れるまでに時間がかかった業務を教えてもらえますか。
黒木:やっぱり財務は苦労しましたね。
簿記については入社までにかなり勉強し、簿記2級も取得できましたが、それでも現場に出てからは苦労しました。
決算書をお預かりした際も、その場で財務を読み解いて「ここがこうですよね」という話をするのはとても大変でした。やはり、その場で決算書を見ながら社長様とディスカッションする時間はとても重要だと思います。その顧客企業の理解もできますし、なにより信頼関係の構築を図れると思っています。
その問題をどのように乗り越えられましたか。
黒木:夜な夜な会社にある過去のIM※ や財務諸表を読んで、独学で勉強していました。
あとは、社内の案件審査会にも参加しました。
最初は「なんの話をしているんだろう」と内容すら分からず、担当者に投げかけられる指摘とそれに対する打ち返しのレベルの高さを痛感して、危機感を覚えました。
期待と不安、半々のなかで勉強を続けましたね。
※IM:企業概要書。譲渡企業の詳細情報をまとめた資料
必要なマインドは「お客様のお手伝いをしたいという気持ち」
fundbookではアドバイザー同士による連携も盛んですが、働くうえでこの環境はどう役立っていますか。
黒木:先日成約となった案件も、チームのメンバーがしっかりとお相手の企業様と深い関係を築けていたことが大きかったです。
事前に「この案件で譲受企業はいますかね」と相談したところ、「これくらいの条件で検討してもらえそうだよ」と情報をもらえて。
売り手側の企業様との面談の際も、譲渡価格や買い手企業の紹介を進めることができ、成約に繋がりました。社内での連携の結果だと思います。
黒木さんの目から見て、M&Aアドバイザーに向いている人の素養は何だと思いますか。
黒木:お客様のことを深く考えられる人ですね。
M&Aは企業の提携ですが、そこには社長様だけでなく、会社の従業員の方々とそのご家族まで見据えて、お客様のためにどんな提案ができるか考える必要があります。
M&Aアドバイザーという立場ですが、M&Aを実施することが正解だとは限りません。お客様の事を考えた結果、M&Aの選択がベストではないということもあります。その時にはアドバイザーとして、M&A以外の選択肢を提案する必要もあるかと思います。
その時には自分の利益にはなりませんが、そういった結論があってよいと思っています。
自分の利益ばかりを見てしまうと、M&Aはうまくいかないと強く思います。
成果を出すための行動やマインドを教えてください。
黒木:行動面で言うと、やっぱり量。マインド面で言うと、お客様のお手伝いをしたいという気持ちです。
社長様には本音ベースでお話をして、M&Aがベストな選択であるという場合には「お手伝いをしたい」という私の思いを伝えるようにしています。
会社の譲渡という一世一代の決断をするときにはどんな社長様も迷いが生じるかと思います。その時にはアドバイザーとして背中を押してあげる、その為には本気で企業の事を考え、本気の思いをぶつけることが大切だと思います。
不動産業界での経験は、M&A業界にも活きると思いますか。
黒木:そう思います。
先日もホテル業界の案件を担当したのですが、前職での不動産関係の知識や経験が活きたと感じています。
企業価値の評価をする際にもそうですし、実際のディール中にも不動産関連の論点が出てくる場面が多くあります。
営業のノウハウはもちろんですが、業界知識が活きる場面があると思いますね。
最後に、今後のビジョンについて教えてください。
黒木:まずは一人前のM&Aアドバイザーとしてお客様から信頼され、活躍していくことです。
できるだけ多くの案件に携わって、後継者不在に悩まれている方のお手伝いができたらと考えています。その為には財務、税務、法務、ビジネスと必要な知識は多岐に渡りますし、お客様から信頼される人間性も必要だと思います。
経営や承継で悩んだ際に「黒木に相談してみよう」と連絡を頂ける存在、お客様から頼られる存在になりたいと思っています。